第一章 殺害

オレの名前はバランティス。歳は 16だ。歳なんてどうでもいい。問題は俺の父親なんだ。
オレの父親の名はイリアス。父親はバシバシとオレを殴りつける。そう、それが彼の日課なのだ。俺には1人の妹がいて、名をリッツァと言った。毎日、オレと妹はちょっとしたくだらないことで父親に殴られていた。どうして殴るのかというと、それが趣味なのだ。16年間よく耐えてきたと思う。
俺は高校2年生。妹は中学の3年だ。別になんの取り柄もないオレだった。そして、なんの取り柄もない町に住み、なんの取り柄もない学校へ通っていた。
なんの取り柄もない学校からオレは家に帰ってきた。妹はすでに家にいた。
「バランティ、おかえり。」
妹が台所の方から声を出した。オレも返事をした。
「おお、もう帰っていたのか。」
オレは自分の部屋に荷物を置いて、台所へ行った。妹は話し始めた。
「今日は、学校に行かなかったのよ。」
「どうして?」
「こんな顔して行ける?」
妹は顔のアザをオレに見せた。右のほおが青黒くなっている。
「いくら化粧しても見えちゃうもの。学校になんて行けないわよ。」
「確かにね。その顔じゃ恥ずかしい。」
妹は自分の顔を手鏡で見ながら言った。
「ああ。学校から電話が来ませんように・・・。」
妹は水を飲むと自分の部屋に戻って行った。オレも水道の蛇口をひねり水を飲んだ。そして、自分の部屋に戻って行った。
カバンを開け中から授業の道具を出した。そして、学校とは関係のない1つのカセットテープを出し、手に取った。昨日、友達のマリオにもらったんだ。オレはこの友達にとても感謝をしている。とても親しく思っている。きっと今までで一番仲の良い友達で、心の許せる友達だった。この友達に会うまで、オレはクラスの中でいじめられ、独りだったんだ。
カセットテープのAサイドにタイトルが書いてある。
”国を変えろ”
変えろ。その言葉が頭の中をめぐる。カセットテープをデッキに入れる。音を小さくして流す。ガチャガチャとした音がスピーカーから出てくる。それにつられて男の声が流れ出て来た。雑な声を発して、叫んでいる。オレはマリオがなんという曲を聴いているのだろうと思った。
音楽を聴いていると、次第に歌詞を聞き取れるようになった。

死んでるぜこの国
何も感じていない
お前少しアホじゃねぇか?
70’sにヒッピーがいた
それよりも劣るぜ
今の生活に何を満足してんだよ
それでも人間かよ
機械じゃねぇの?

死んでるぜお前
何もしようとしない
政治家が笑ってるぜ、いいのかよ?
90’sのバカが
寝てるってな
今が平和だなんていうなよ
全然だね
平和ボケじゃねぇの?
人間だったら立ち上がれよ
この国を住みやすいように
変えろよ
生きているくにに変えろ
オレたちの国に変えろ
オレたちの国
オレたちの国
オレたちの国
変えろよ

父親に頭を殴られるよりも痛く心を殴られた。もう一度巻き戻してこの曲をかけた。いい曲だと思う前に、オレは魂の叫びを感じた。この歌はまさにオレに向かって発しているメッセージだった。
バタン。父親が帰って来た。よろよろと自分の部屋に向かった。彼はベッドに腰をかけると叫んだ。
「クソ野郎!」
オレも妹も怯えた。どうしようもなく恐ろしい。部屋から出たくはない。
ただ、今までのオレはここで殴られることだけを考え怯えていた。しかし、今はどうすればいいのかと考えを廻らせるようになっていた。
父親はデンワの所に行きデンワをかけた。
「もしもし、ピッツァを2つお願いしたいのですが。はい。062-555-7253です。はい。わかりました。」
ガチャ。デンワを置いた。彼は外の人との接触はまるで別人だった。いわゆる、良い人だった。
「おい、バランティ、リッツァ。今日もピッツァを頼んでやったぞ。感謝しろ。」
オレはドアを開けて、父親の部屋に行って言った。
「ありがとうお父さん。」
部屋の中には誰もいなかった。突然、オレは倒れ込んだ。頭に激痛が走った。
父親はドアの横に隠れていたのだ。そして、オレが入って来たのを見て、オレに殴りかかって来たのだ。
「立てよ。はははは。」
これが父親だ。妹も部屋から出て来た。そして、廊下でオレを見つめていた。
オレがしばらく立ち上がれないでいると、彼はオレを蹴り始めた。
「立て!立て!」
彼は蹴り続けた。ドアのチャイムが鳴った。ピッツァが来たのだ。彼は蹴るのを止めて玄関へ行った。
「どうもありがとうございます。いくらになりますか?」
彼はお金を払い、ピッツァを持って台所へ行った。オレと妹も彼に付いて行き、テーブルに座った。リッツァは引き出しからナイフを出して、ピッツァを切り離した。彼は食べ始めた。オレとリッツァも食べた。ここのピッツァは美味しい。
リン、リリリリン。デンワがなる。妹は急に青白い顔おをした。妹の予想は的中した。学校からだった。妹は食べるのを止め恐怖に怯えた顔をしていた。オレはこの顔を忘れはしない。オレは、火の粉がかかる前に、自分の部屋に戻った。彼は電話を置くと叫んだ。
「リッツァ!!学校を休んだな!」
彼は走って台所へ行き、妹を殴った。これが、彼の趣味なんだ。妹はイスからなだれ落ちた。そして、謝る。彼は殴る。蹴る。妹は謝る。
「誰が学校に通わせてやってると思っているんだ!」
殴る音が家中を響く。この音を聞くだけで痛みが沸き上がってくる。オレはカセットテープをかけた。少しでも気を紛らわせたかった。
「ここまで育ててやったのは誰だ!」
叫び声は聞こえてくる。
”変えろ”
その言葉が頭の中に入ってくる。この音楽の中の声だ。国を変えろ。だんだんと、国が自分のような気がして来た。
「誰が正しいと思っているんだ!」
オレはステレオのボリュームを最大にした。激しく音楽は鳴り響く。
「ウォーーーー!!」
オレは叫んだ。その時のことを今でも明確に覚えている。まるで、スローモーションのようにね。
オレは台所に走りこんで行った。彼はリッツァの上に乗り、頭をぶちのめしている。オレはテーブルの上にあったナイフを握りしめた。彼は大きな音とオレの叫び声を聞いて振り向いた。俺はすかさずナイフを刺し込んだ。彼は叫んだ。
「誰のおかげで生きているんだ!」
オレはもう一度刺した。彼はゴボッという音を喉から出して、口から血を吐いた。吐いた血が妹の顔に降りかかる。妹は顔についた血を袖で拭き取った。
「殺った!殺ったー!」
オレは感動と喜びにあふれた。そして、オレにもできることがあるってわかった。妹は上に乗っかっている死体を振り払って行った。
「バランティ。どうするの?」
妹は平然として台所で顔を洗った。
「オレが殺った。オレにでもできるんだ。」
「そんなことより、警察に捕まるのよ。」
「逃げるよ。州境まで行けば大丈夫だよ。それ以上は追ってこないから。」
「私はどうすればいいの?」
「着いてくるか?」
「そうするしかないわよ。私一人をここに置いていかれても、どうしようもないもの。」
「じゃぁ、一緒に行こう。」
オレは台所で手を洗った。そして、死体を眺めた。

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うや

童話、小説、その他、いろいろ妄想したり書くのが好き。最近は、わたしのトリセツ「ショコラ」の文章を担当してるよ。https://chocolat.jp/ まだまだ書くこといっぱいあるんだ。

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