第二章 未来

オレと妹は父親の死体をそのままにして、眠りについた。早朝には目を覚まし、家を出る準備を始めた。そして、オレの友達であるマリオには伝えなくてはならないと思い、マリオの家にデンワをかけた。
彼もオレと同じ十六歳で、学校中を見る限りオレと同じように友達は少なそうだった。彼は一人暮らしをしていると言っていたので、親のいない生活についても助言をもらえるだろうと思った。
「ゴメン、朝早くから。」
「本当に早えな。どうした、バランティ?」
「変えたんだ。」
「何を?」
「何もかも。」
「それじゃ何もわからない。簡単に説明してくれ。」
「父親を殺った。」
「ん?殺したってことか?」
「そう。それで、これからどうすればいいのかって思って。一応逃げる準備はしてある。」
「お前がやったのか?」
「ああ、そうだよ。」
「良くやったっていうか、まぁ良くないことだけど、行動をしないと何も始まらないよな。オーケー、お前んちまで車で迎えに行ってやるよ。」
「本当に?ありがとう、助かる。」
オレはデンワを切った。机の上に学校の教科書があり、オレは手に取りパラパラとページをめくった。カエルの体内の仕組み・・・。筋肉の伸縮の原因は・・・。
オレは、昨日まで見ていたこの生物の教科書を眺めていると、昔いじめられていた時に書かれた落書きを目にした。
”ばか” ”死ね”
オレは何も感じずに、またパラパラとめくった。しかし、教科書の中には全く大事なことは書かれていなかった。カエルの体内、鳥の体内、人間の体内を見て、働きを知って、何になるんだ。オレは教科書を閉じると、手で引き裂いた。そして、ゴミ箱に捨てた。全ての教科書に必要なところが全くない。いや、字が書けて、読めるようになったことと、お金の計算ができるようになったことは必要だったか。
家のドアのチャイムが鳴った。オレは玄関まで行き、ドアを開けた。外に立っていたのはマリオだった。
「迎に来たぜ。」
バンバンに立てたモヒカンでオレを迎えに来てくれた。
「中に入る?」
オレがそういうと、マリオが家に上がって来た。妹が部屋から出て来た。
「こいつが妹だ。」
「妹がいたのか?」
「ああ、すまん。一緒に連れていく。」
妹は用意した荷物を持って玄関へ行った。マリオは聞いた。
「なぁ、死体は?」
「台所に。」
オレは台所の方を指した。マリオはまっすぐ台所へ向かって行った。
「こりゃすげぇ。」
オレもマリオの声のする方へ向かった。死体が転がり、それをマリオがジロジロと覗いている。そして、マリオが言った。
「人を殺すことは良いこととは言えない。ただ、お前の場合は完全な正当防衛だろ?自首してもいいんだぜ。」
「自首なんてしないさ。何が正しくて、何が間違いなのか解らないからね。」
「どっちでもいいぜ、逃げる気なら手伝う。いい街があるんだ。」
マリオはそう言って家の外に出た。外に停まっていた車は空色のワーゲンのワゴン車だった。後部座席のサイドドアを開け、中に荷物を積み込んだ。車の中には楽器や機材が積み込まれていた。
「これ全部マリオの?」
「ああ。大きなライブハウス行って盗んで来たのもあるけどね。」
「すごい量だな。」
「これだけ集めるのに三年かかっちった。十三の時からだなー。」
「三年もバンドやってんだね。」
「まぁ、バンドメンバーはコロコロ入れ替わってるけどな。」
妹も家から出て来た。そして、オレと妹は、機材やらが置いてある後部座席に乗り込んだ。マリオは運転席に座りこんだ。オレは聞いた。
「ところで、どこの街に行くんだ?」
「国道四十号線の始発点にある街。」
妹が聞いた。
「街の名前は何?」
「そうだな、名前は【未来】かな。」
オレと妹は声を揃えて言った。
「【未来】?」
マリオはにこにことしていた。聞いたことのない街だ。

ズッキューン 1 Star 0
Loading...

うや

童話、小説、その他、いろいろ妄想したり書くのが好き。最近は、わたしのトリセツ「ショコラ」の文章を担当してるよ。https://chocolat.jp/ まだまだ書くこといっぱいあるんだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください