第三章 街中

オレたちの車は昼過ぎには州境を超えた。みんな腹がすいて来た。妹が言った。
「どこかで食事しようよ。」
マリオは周りを見てコンビニエンスストアを指して言った。
「あそこで何か買うか?」
オレも頷いた。車をコンビニエンスストアの駐車場に停めた。
車のドアを開け外に出た。3人で店の中に入り、食べるものを探した。オレはベーコンレタスサンドと、ミネラルウオーター1リットルを選んだ。妹はオレに言った。
「バランティ。私にもその水ちょうだい。」
「ああ、いいよ。」
それが答えるとマリオが言った。
「それだけじゃなりない。夕飯も買っておけよ。」
オレも妹も言われた通り、もう一度店内をグルグルとして夕飯も選んだ。レジに行き、支払いをすませると、店を出てオレは水を飲んだ。そして、ベーコンレタスサンドをほうばった。しばらくオレたちは外の空気を吸っていた。
「そろそろ行くか?」
マリオはそう言って車に乗り込み、手に持っていたカップコーヒーをドリンクホルダーに置いた。オレは水を少しむと、マリオに改めて聞いた。
「ところでさ、”未来”なんて街の名前は知らないんだけど。」
マリオは口の中のものを飲み込むと答えた。
「ああ、そんな名前の街はどこにもない。」
すかさず妹が言う。
「どうして”未来”って言ったの?」
「どうして?聞くまでもない。その街自身がこれから”未来”に向かって行くからだ。どこの町にだって未来はある。だけど、オレたちがこれからいく街は、一番早く”未来”が訪れるんだ。」
オレは首を傾げながら聞く。
「一番早く”未来”が来るってどう言うこと?」
マリオは微笑んで言った。
「それは、起こってからわかるさ。」
オレと妹は顔を歪めた。
「そろそろ行くぜ。」
マリオはそう言うとエンジンをかけ、車はまた走り始めた。40号線の長い道のりを走り続けた。
それから数時間が過ぎ、陽も沈み始めた頃、マリオが叫んだ。
「見ろ!あの明かりがついている街だ。」
緩やかな下り坂を進んで言った。道は真っ直ぐと吸い込まれるように街へ伸びていた。
車が街へ入った。すぐにデジタルの時計台が立っており、時間は20:37を表示していた。時計台を通り過ぎセンターの方へと入って行った。普通の町となんの変わりもなく、夜の町はネオンに照らされていた。
マリオは自分のモヒカンを手で触りながら言った。
「どう?いい街だろ?」
オレは360度見渡して言った。
「普通の町だよ。歩く人もね。」
マリオは微笑みながら言った。
「今はね。普通だよ。」
オレはマリオが何を企んでいるのかわからなかった。景色も行き交う人々も何も他の町と変わりはない。妹を見ると、眠っていた。マリオは街の小道へ車を走らせ、そして、小さなパーキングに車を停めると後部座席の方を向いて言った。
「バランティ。街を案内する。」
マリオが車から出ると、オレにも外に出るように指図した。オレは外に出るとマリオに言った。
「リッツァがまだ中で寝てるけど。」
「大丈夫、寝させておきなよ。」
マリオは行きつけの店を案内すると言って、街中へオレを連れて行った。1分歩いたか歩いてないくらいの場所にその店はあった。”Das Instituto”と書いてある。オレは聞いた。
「デス・インスティトゥト?」
「ダス・インスティトュート。ドイツ語で”研究所”って意味らしい。」
「へぇ。ドイツ語か。珍しいね。」
「ここの店主がドイツ人なんだ。」
「と言うことは、ここはドイツ人街なの?」
「いや、オレたちが住んでいた所のように、イタリア人だけの街ってことじゃないんだ。この街は色々な国から来た人たちが集まり交流しているんだ。」
「人種差別などの問題はないのか?オレは元々ギリシア人だからさ。」
「今の所聞いたことはないね。特には人種でコミュニティを形成していないね。多国籍な街なんだ。」
「いい街だね。」
「いい点は、そんなところかな。」
「悪い点があるのか・・?」
「外で立ち話しもなんだから、中に入ろうぜ。」
マリオはオレの肩を軽く叩いて中に誘った。オレは中に入って驚いた。”研究所”と言う意味が解った。
客に出す飲みのもは全てビーカーやフラスコに入っている。しかも、テーブルランプは、アルコールランプといった大変凝ったBARだった。横の壁には、大きな黒板がかかっており、メニューがチョークで書かれていた。広さはさほど広いと言うわけでもなく、テーブルが6つとカウンターがある程度だった。奥のカウンターから声が聞こえて来た。
「ヘイ、マリオ!ヴィー・ゲーツ?」
「ヤー、ミーァ・イスト・グート。」
オレはマリオに話しかけた。
「今のはドイツ語か?」
「そうそう、少し習ったんだ。」
カウンターに行き、オレとマリオはイスに座った。カウンターの中の男が話し始めた。
「久しぶりだなぁ、マリオ。こっちの男の子は友人かい?」
「ああ、こいつはバランティスって言うんだ。さっきまで同じ街で暮らしてた。」
「暮らしていた?どう言うことだ。」
「これからはこの街で住むんだよ。」
オレは言った。
「よろしく。」
「私はアルフレッド。よろしく。何か飲むかい?」
オレは黒板を文字を見つめて、バナナビールを頼み、マリオはシュナップスを頼んだ。アルフレッドは言った。
「バランティス、この街のどこに住むつもりだい?」
「いや、まだ特に決まっていないんだ。どこかいいところないかな?できるだけ街の中心がいいんだけど。」
「それだったらこの建物が空いている。」
オレが言った。
「本当?それならここがいい。家賃はいくら?」
アルフレッドは笑って言った。
「アッハッハ。この店で働く気はないか?もし、働いてくれるなら家賃はいらない。給料も多少出す。アッハッハ。」
アルフレッドがなんで笑っているのかわからなかった。冗談で言ったのかもしれないな。オレは即答した。
「ここで働くよ。本気だ。」
アルフレッドはまた笑って言った。
「オーケー。じゃぁ、早速だが明日からよろしく頼む。」
そう言って、バナナビールとシュナップスを出して来た。オレは財布から金を取り出して、マリオの分も奢ろうと二人分のお金をアルフレッドに渡した。アルフレッドは、手をかざして言った。
「おいおい、大事な店員からは金は取れないな。アッハッハ。」
オレとマリオは乾杯をした。マリオは、アルフレッドに尋ねた。
「ねぇ、ドイツ語で乾杯ってなんで言うんだ?」
「プロースト。」
オレとマリオは声を合わせた。
「プロースト!」
オレは言った。
「ギリシア語では、ヤーマスさ。」
そして、今度は、ギリシア語で乾杯をした。
店の様子をチェックしながら飲みつつ、妹のことを思い出した。オレはマリオに言った。
「あ、オレ、妹を連れてくるよ。」
「一人で行けるか?」
「すぐそこだろ。行ってくる。」
オレはそう言うと、バナナビールを飲み干して、早足で店から街へと出て行った。

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うや

童話、小説、その他、いろいろ妄想したり書くのが好き。最近は、わたしのトリセツ「ショコラ」の文章を担当してるよ。https://chocolat.jp/ まだまだ書くこといっぱいあるんだ。

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