さつきやみ うや

五日目 一日木

ぼくは今日も学校で勉強中。
そろそろ最後の授業終了のチャイムが聞こえてくるかな?
ぼくの席は窓辺でいつもぽかぽかと日があたる。温かくって眠ってしまうこともあるよ。
そんな時は、先生に怒られちゃうんだけどね。
「それでは、」
先生が何か言っている。
「最後に、この種をみんなに配りますね。」
すると、前に座っている子がぼくに3つ種を渡した。
そして、ぼくは一つだけぼくの机に置いて、後ろの子に2つ渡した。
みんな一つずつ育てるんだ。
先生が机をこんこんとたたいた。みんなは種に興味を持っていたけど、
静かにして、先生の方を見つめた。
「この種は、一日木と言って、とてもめずらしい木の種なんです。」
一日木?聞いたことないなぁ。一年草とかは聞いたことあるけどね。
先生は続けて言った。
「一年草は知っていますか?春に芽を出して、夏に花をつけて、冬が来ると枯れてしまう花たちのことですね。そして、この一日木と言うのは、植えて芽を出したらどんどん大きくなって、夕方には立派な木になるんですよ。そして、夜が来ると枯れてしまうんです。その観察日記をみんなにつけてもらいます。」
一日木は、一年草よりも早く育って、早く枯れてしまうのかぁ。へぇ。
からーん。からーん。
授業の終わりのチャイムが鳴った。今日は、これで授業はおしまい。
さっそく、家に帰って種を植えなくっちゃ!
ぼくは、種をズボンのポケットに入れると走って家に戻った。
「ただいまぁ!!」
ぼくは、元気良く家に飛び込むと自分の部屋へ走りこんで、かばんを置いて、庭に出た。
ポケットから、一日木の種を出すと地面に置いた。
庭の真中に10cm程度穴を掘って、種を入れた。そして、土をかぶせて、水をかけたら出来上がり。
あ、ノート持って来なくっちゃ!
ぼくは自分の部屋に行って、本棚から使っていないノートを探した。
これなら絵を書くこともできるし、いいな。
ぼくは、絵日記のノートを手に持って、鉛筆を口にくわえてパパの部屋に行った。
パパの部屋から、一つの懐中時計を手にとって開いた。
12:34。あ、きりがよい時間だぁ。ちょこっとだけ、幸せな気分。
おお、もうちょっとで56秒になる。ぼくは、針のちくちくを見ていた。
やった!12時34分56秒だぁ!
ぼくは、懐中時計を閉じてポケットに入れて庭に向かった。
あ!
すでに種から芽が出ていて、2枚の葉をつけていた。
ぼくは急いでノートを開いて庭のどこに、どのように植えたのかをきちんと書いた。
そして、すぐに芽が出たことを絵にして、懐中時計を開いて、何時何分かもちゃんと書いた。
見ているうちにちょっとずつ大きくなっていくよ。
ママが庭に出てきた。
「何を植えたの?」
「一日木だよ。知っている?」
「一日木なの?まぁ、懐かしい。昔はね、たくさんあったのよ。今は、とても少なくなってしまったわ。」
「へぇ。昔は、たくさんあったのかぁ。」
「お昼ご飯ができたから、食べましょう。」
「うん。」
ぼくは、ママと一緒に家に入った。
「今日は、パスタだね。」
ぼくは、パスタが大好きで、今日は本当にうれしい日。つるつると、パスタを食べていると、くろも台所に来た。ママは、くろに少しのパスタをあげた。くろはおいしそうに食べでいる。
ぼくは、食べ終わるとノートと鉛筆を持って外へ飛び出した。
ぼくが植えた種はすでにぼくよりも大きくなっていた。
「えっと、時間はぁ。」
ぼくは懐中時計をポケットから取り出した。
そして、ノートに13:04と書いて、木の絵も書いた。
ぼくはどのくらいまで伸びるのかなぁって思って空を見上げた。
「あ!!明日はニコラウスの日だ!!」
東の空から、大きな円錐形の船がゆっくりとこっちへ飛んできていた。
船と言っても、一つの小さな島くらいはあるんだけどね。
上のほうがとんがっていて、その上には大きなプロペラが3つ付いているんだ。
円錐の中には5つの階があって、そこにニコラウス達が住んでいるんだよ。
ぼくはその絵もいっしょに書いた。
「ママ!ニコラウスの船が飛んできたよ!!」
ぼくは、家に向かって叫んだ。ママは、窓から顔を出して東の空を見た。
「良い子にしていると、きっとニコラウスは来るからね。」
ぼくは、わくわくしながらその船を見つめた。
あ。一日木を研究しなくっちゃ!

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