姫と騎士とアロンの杖

遥か過去にあった戦闘で傷ついた古城から突如現れた少女。過去と現在と近未来と。少女はどこから来たのか。少女の想いは届くのか。

序章

雷鳴が響き渡り、雨が滝のように古城の壁を流れ落ちる。 もう誰もいないであろう古城の前に、少女は1人で座り込み、ひたすら泣いている。 王冠を右手に握りしめたまま。 毎日、古城に訪れるお爺さんが、少女を目にし問いかけた。 「 […]

第一章 研究所

サムエルは、ショシャナとカテジナを後部座席に案内した。カテジナは初めて見る滑稽な乗り物に戸惑っていた。雨脚は早く、遠くから陽が射し始めていた。間もなく止むことだろう。 遠くには標高の高い山が見え、あたりは青々と緑が生い茂 […]

第二章 国王の予言

「ラーヴァーン!」 王室から太く大きな声が聞こえてきた。急ぎ足で鎧を身にまとった男が一人、室内に一礼をし入ってきた。王座には、黒い服に身を包み、長い黒髪に王冠を被り、顔髭を長く伸ばした男の前に膝をついて言った。 「はっ、 […]