くろがぼくのまくら元に来ていて、ぼくの左の頬はぽかぽかとして気持ち良かった。
ぼくは、目を覚まして起き上がった。
くろも、あくびをして起き上がりぼくの顔を見つめていた。
そうそう、今日は学校が休み、でもパパとママは仕事に行っちゃった。
だから、ぼくが家のお留守番さ。
お留守番の時は決まって、屋根裏部屋を冒険する。
屋根裏部屋はいつも、ぽかぽかと太陽が昇っていて、とても広い野原なんだ。
その野原の上にはいろいろな箱があって、いつもぼくはひとつずつ開けるんだ。
それが、ぼくのお留守番というわけ。ぼくは屋根裏部屋へ続く階段を登っていた。
すると、くろがぼくの後ろからついてきた。
「くろ。いっしょに来るかい?」
そう言うと、くろは「にゃぁ。」と鳴いた。
ぼくは屋根裏部屋のドアを開けた。くろは早速屋根裏部屋に入っていった。
そして、丸くなる。ぼくも入った。うーん、気持ちがいい。
ぽかぽかと太陽は光をくれる。
さて、どの箱を選ぼうかなぁ?ぼくは冒険をはじめた。
この間は、この箱を開けたんだ。そう、サーカス団の人たちが次から次へと出てきて、
ぼくに綱渡りとか、球乗りとか、一輪車を見せてくれた。
そう、トラやゾウも出てきたのだけど、何一つ芸をしないんだ。
おかしいなぁって思って、サーカス団の一人に聞いたんだ。そうしたら、
「どうして、トラやゾウが芸をしなくてはいけないのかい?
ぼくたちは芸がしたいからしているのであって、トラやゾウがしたくなかったら、しなくていいんじゃないのかい?」
って言ったんだ。ぼくも、それはそうだなって思ったよ。だって、ぼくはサーカスなんてしたくないもの。
今日はこれに決めた!
ん?今日の箱は、変なことに置手紙がしてある。
「この箱に入ったら出られない。」
そう書かれると、中身が気になるよ。ぼくは思い切って箱を開けた。
あれ?箱の中身は、この広い野原だった。
どうなっているんだろう思って、顔を突っ込んだ。すると、顔が抜けなくなった。
箱の中にくろが日の光を浴びて眠っている。
ぼくは顔を抜こうとした。やっぱり顔が抜けない。
あ、箱の中にぼくがいる。そして、そのぼくも、箱に顔を突っ込んでいる。
ということは、今こうやってぼくが顔を突っ込んでいるのも、もう一人のぼくがきっと、見ているんだな。
顔が抜けないので、仕方なく箱に入った。すると、元の草原に戻った。
おかしいなぁ。「この箱に入ったら出られない。」って置手紙があったのになぁ。
ぼくは上を見上げた。あ。空に小さく穴が開いている。
そうか、あの箱の中身が、ここの野原だったのかぁ。と、やっと気がついた。
ぼくは、くろに近づいて言った。
「気持ちいいかい?」
「にゃぁ。」
と、くろは答えた。
投稿者: うや
童話、小説、その他、いろいろ妄想したり書くのが好き。最近は、わたしのトリセツ「ショコラ」の文章を担当してるよ。https://chocolat.jp/ まだまだ書くこといっぱいあるんだ。