十四、平凡な一日(三)

 アレクスは目が覚めると、ナンシーが朝飯を作っている。うまそうなにおいがしている。CDを付ける。今日もまたCDショップに働きに行かなければならない。でも、おもしろい仕事なので、楽しそうに出かける。アレクスは、歌いながら食う。少し吐き出しが、問題はない。ナンシーがきれいにしてくれる。食事が終わると、アレクスはナンシーに、
「それじゃあ行って来る。」
 と言うと、ナンシーは
 「いってらっしゃい。」
 と言った。アレクスはいつものお気に入りの黄色い軍隊ブーツをはき、皮ジャンを着込み出ていった。ナンシーは家で、食事の残りをかたずけている。
 アレクスはCDショップに着くと大きな声で、
 「おっはよー!」
 と言った。カオスはすでに来ていた。奥に進んでいく。今日もいつものようにCDの点検をして、好きなのを聴いてみる。大きな音で「セックス・ピストルズ」の「フリッギン・イン・ザ・リッギン」をかけて、ポゴりながら歌う。

It was on the good ship,Venus(それはヴィーナスっていう船でのこと)
By Christ you should have seen us(間違いなくお前は俺達を見たことがあるはずだ)
The frigurehead was a whore in bed(船首に飾られた像はベッドに横たわった売春婦)
And the mast was a rampant penis(マストはいきり立ったペニスなのさ)
The Captain of this lugger(この小さな帆船のキャプテンは)
He was dirty bugger(汚くて卑しい男)
He wasn’t fit to shovel shit(くそをシャベルですくうこともできない男)
From one place to another(あっちこっちをウロウロするだけなのさ)
Friggin’ in the riggin’(船具の陰でまぐわっている)
Friggin’ in the riggin’(船具の陰でまぐわっている)
Friggin’ in the riggin’(船具の陰でまぐわっている)
There was fuck all else to do…(やってることはファックばっかり…)

 最高にいやらしい曲である。それが楽しい。店長を見ると、パンクスっぽい格好をしていた。アレクスとカオスは笑って、
 「似合ってるぜ!」
 と言った。店長も一緒にポゴった。客が入ってきてCDを見ている。アレクスは近づいていき、強引にCDを買わせる。そして、元気よく見送った。
 「また来いよ!」
 とアレクスが言うと、カオスも続けて、
 「元気でな!」
 とわけのわからないことを言った。そして、いつものような日々を送り始めた。シド・ヴィシャスの「My Way」がアレクス達の心を支えていった。

 マイ・ウェイ・・・ 俺のやり方で・・・