九日目 星の学級

ぼく達の学校には、毎年この時期になると、占星術士が街にやってくる。そして、占星術士が先生となり、お星様の授業をやってくれるという、ちょっぴり変わった学級が作られるんだ。

その学級は、ぼく達の学校の生徒であれば誰でも受けることができるんだ。もちろん受けなくてもいいのだけど、みんな楽しい授業だからって星の学級にやってくる。

どんなことを学べるかというと、お星様の輝きかたや、お星様の位置で明日のことを調べたり、困ったことをどうしたら解決できるのかを調べることができるんだよ。

普通の授業が終わって一度みんなは家に帰ってから、パパやママに連れられて、夜の学校へ向かう。ぼくはママと学校へ向った。教室の前でママと別れてから教室に入ると、先生は教室の入り口に立っていて、ぼくを見て言った。

「やあ、こんばんは。一年ぶりだね。元気にしていたかな。今日はみんなに、これを配っているから、大切に持っているんだよ。」

少し大きな飴玉くらいの、透き通った不思議な球体で、中にわかりやすい針が入っている。

「先生、これはなあに?透明でとてもきれい。中に入っている針は少し動くみたい。」

「針が動くことに気がついたのかい。これは、星の羅針盤と言いうんだ。実際に占星術として使うものはもっと大きいのだけど、星の学級の子供達が扱いやすいよう、小さめに私が作ったんだ。」

「へぇ。先生が作ったんだ。すごいなぁ。」

「作るのも占星術士としての役割の一つだからね。簡単さ。」

先生はそう言うと、他の子供達にも羅針盤を配って、そして言った。

「おーい。みんな、羅針盤は受け取ったかい。」

みんな、はーいといい返事をして、じろじろと透明の羅針盤を眺めていた。先生は続けて言った。

「では。一度先生の方を見てくれるかな。」

そう言って先生は教室の入り口から黒板の前に向かった。

「これは先生の羅針盤なんだけど、中に針が入っているのはみんな気がついたよね。」

子供達はうんうんと、頭を縦に振った。

「この針は、星座を指しているんだ。その星座によって、星の占いができるんだよ。」

ぼくは、気になっていることを聞いてみた。

「先生。でも、特に何かを占いたいって、ぼくはまだ思っていないのに、なんで星座を指しているのかなぁ。」

「うん。それは、後でみんなに説明するから、待ってね。」

そう言って、先生は一呼吸してから続けた。

「さて。君たちの持っている羅針盤は子供達でも簡単に占星術ができるものなんだ。すでに気がついている子もいるようだけど、みんなの針がそれぞれ違う方向を向いているでしょう。まだ知らなかった人は、周りのお友達に見せてもらって。」

ざわざわとみんなは会話をして、また先生の方に注目する。

「なぜみんな違う方向を向いているかというと、それぞれ違う運勢を持っているからなんだ。実際に学校の屋上へ上がって試してみようかな。さぁ、ついて来て。」

ぼくたちは先生の後をついていき、階段を登って屋上へでた。屋上は、普段は入れないので、この学級の時だけは入る事ができるので、本当にワクワクするんだ。

「これから、みんなに紙を七枚配るから、並んで取りに来て。一枚は星座の位置が書かれているものだから大切にするんだよ。後の六枚のうちの一枚は、これから使うよ。残りの五枚はお家に帰ってから試してみるといい。」

みんなは順序よく並んで、先生から星座の書かれた紙と、なんとなく不思議な感じのする紙を六枚もらった。

「さあ、ここからが本題だよ。」

先生はそう言うと、羅針盤を覗き込んで続けた。

「みんな空に一つだけ動かない星があるのは知っているかな。」

みんなは一斉に答えた。

「静止星。」

「そう、正解。静止星の方向は覚えているかな。先ほど配った星座の地図を見てごらん、下の方に山猫座があるのを見つけられたかな。そのしっぽが静止星。星座の地図の山猫座と同じ方向を見つけてごらん。そうすると、先ほどの羅針盤がどの星座を指しているのかがわかるはずだよ。」

みんな、自分の指している星座をみて、その星座がなんて名前なのか調べている。

「自分の指している星座がわかったかな。そうしたら白紙を地面に置いて、その上に星座の地図をきちんと重ねて、地図の真ん中に羅針盤を置いてごらん。そのまま、三十秒くらい待つんだよ。」

ぼくは先生に聞いた。

「ねぇ、先生。さっきも聞いたのだけど、占いたいことをまだ何も考えていないよ。」

「そうだね。今回は誰でもできる占星術で、この白紙を使っているけど、もう少し占星術ができるようになると、占いたいことに合わせて違った紙を使うんだ。ただ、この白紙も面白くてね、すでにみんなが占いたいだろうことを感じ取って書き出してくれるんだよ。そろそろ、地図の下の紙を取り出してごらん。」

おそるおそる紙を引き抜いてみると、『明日はどんな事が起こるのかな』という見出しが書かれていた。続けて文字が浮かび上がってくる。

君の明日は、とても素敵な一日になります。ただ、怖いことがあるかもしれません。でも、大切な家族と共にきっと解決します。

少しだけ、怖いことっていうのが気になるけど、解決するなら大丈夫かな。

先生はみんなが驚いている様子を見ながら話し始めた。

「不思議だよね。みんなが占いたいことを考えてなくても、この白紙は勝手に決めて答えてしまうんだ。これが初歩なんだよ。もっと占星術を学んで行くと、もっと詳しく書かれたものになって、解決策なども浮かび上がってくるんだ。さて、今日の学級はここまで。残りの紙はお家の人とやってみるといいよ。さぁ、そろそろみんなのお父さんやお母さんが迎えに来ているだろうから。」

そう言って、教室に戻るとママがいた。先生はぼくに、

「また来年も楽しみにしててね。」

と言って、ぼくは先生に手を振りながら、ママと一緒にお話しをしながら帰った。