二日目 雲の草原

ぼくは、おじいちゃんと一緒に高い山にきた。
とても高くて、雲よりも高い山だよ。
ぼくがどのようにして、この山を登ってきたのか、覚えていないけど。
そんなことは、どうでもいいや。
「おじいちゃん。雲がどこまでも続いているよ。まるで原っぱに雪が積もっているよ。」
「そうだね、雪のようだね。」
「雲の上を歩けそうだよ。」
「歩けるんだよ。」
「え?雲の上を歩けるの??」
「でもな、薄くなっているところは、気をつけて歩かなくっちゃいけない。雨になって下に落ちてしまうからね。」
「柔らかいの?」
「のってごらん。さぁ。」
ぼくは雲のところに行き、おそるおそる右足をかけた。
それはまるで、ぼくが誕生日の時に間違えて踏んでしまったケーキの感触のように柔らかかった。
そして、左足も雲にのせた。
雲の上にのれた!おじいちゃんは、にこにこして、ぼくのほうを見ていた。
「おじいちゃんはのらないの?」
「私は、年をとってしまったからね。のれないんだよ。」
「そんなことないよ、のれるよ。」
「いいんだよ。私は、ここから見ているから。」
ぼくは、雲の上ででんぐりがえりしたり、飛び跳ねたりしてみた。
雲を掘ってみたりもした。
やわらかな感触が、体中を包む。
「おーい。雲が薄くなっているところは気をつけるんだぞぉ。」
おじいちゃんがそう言った。
「うん!」
ぼくは、軽く返事をして、雲の上で遊んだ。雲の上は、晴れていた。
いつもぼくは、雲の下にいて、雨がずっと降っている世界しか知らなかったんだよ。
「それ以上先に行かないほうがいい。」
「大丈夫だよぉ。」
ぼくはそう返事をした。そして、手を振った。
その瞬間、ぼくの足元の雲が薄くなった。下の世界が見える。
あ!ぼくはその穴から下に落ちた。すでに、何の音も感じず、ぼくはひたすら落ちている。
ぼくの手は?足は?え?水の玉だ。ぼくが、水の玉?そんなはずはないよ。
「雨になって下に落ちてしまうからね。」
おじいちゃんの言葉を思い出した。
じゃあ、ぼくは雨になっちゃったんだ。いやだなぁ。