サムエルは、ショシャナとカテジナを後部座席に案内した。カテジナは初めて見る滑稽な乗り物に戸惑っていた。雨脚は早く、遠くから陽が射し始めていた。間もなく止むことだろう。
遠くには標高の高い山が見え、あたりは青々と緑が生い茂っている。
車は、古城を後にして、丘を下るなだらかな道を抜けていく。一度、古めかしい市街地にはいるが、すぐに抜けてまたあたり一面見渡される広い野原に挟まれた道を進んでいく。その先にポツンとただずんでいる白い家が見えてきた。
カサブランカ研究所と書かれている。
表向きは、小さな家ではあるが、地下に深くエレベーターがつづく。最下層に着き、ドアが開くと、かなりの広さがあり、白衣を着た研究員達が12名、パソコンを操作している。言語学や考古学とはかけはなれたような研究所で、最先端技術が集結しているような部屋だ。
白髪で髪の長い研究員の一人が、ショシャナに声をかける。まるで、ここに住み着く長老ではないかと思うほどだ。
「ショシャナ様、こちらの方が我々の探していた方ですか。」
「そうだ。今から15世紀ほど前に、失われた王国からはるばるやってきたのだ。丁重にもてなせよ。」
「かしこまりました。そこで、ショシャナ様。」
「なんだ?」
「午後にでもタイムマシンの実験を再開しようと思うのですが。よろしいでしょうか?」
「成功しそうか?」
「ええ、光のスピードに近づけてコアを外へ放り出すことで、未来には進むことはわかりました。とはいえ、我々が実際に未来に行き、確認はできていないのですが。。ただ、こちらの方も未来へ進んでこられたのでしょう。」
「ああ。」
「理論上では、過去へ行くためには光のスピードを抜く必要があるのですが、今の技術ではまだまだ光をとらえるまでには至っておりません。」
「次期に解決するだろう。過去の技術。そうだな、仮に魔法技術としておくとして、その魔法技術と我々の科学技術で、過去への扉が開かれれば、我々の目的は達成する。」
「希望が見えてきましたね。」
白髪で髪の長い研究員は、しわしわの顔に笑顔を浮かべて、その場を去ってった。
「タイムマシン、起動。」
『過去の事実。歴史は勝利したものにより、書き換えられるのだ。』