ぼくらが次のお城に近づくにつれ、魔物もそれなりに強くなってきたよ。本当は、この大陸一の要塞みたいな人間のお城が近いから、こんなにも強い魔物は棲みつかないはずなんだけどなぁ。
「アル。なんかおかしくないか?」
「やっぱりそう思う?このくらい強い魔物は、だいたい魔王城の近くにいるんだよ。」
「うーん。要塞城にみんな入りっぱなしのヒキニートしてんのかなぁ。」
「あ、お城見えてきたよ!」
一応、賑わってはいるようなのだけど、どう見ても魔物たちだらけ。タルを持ち上げて、お酒をがぶ飲みしてる。
「まさか、、大陸一の要塞城が落とされたのか。。アル、ちょっと、魔物になってのぞいてきてくれよ。」
「わかった!」
ぼくは、人間の体から、ダークドラゴンにもどって、城に近づいていった。魔物達は、ぼくの姿をみると静かになり、一匹の魔物が近寄ってきた。
「ダークドラゴン様。あなたのような方がこんなくだらない人間の城になんのご用で?」
「近くまで来てみたんだよん。中はどうなってるの?」
「なんだか、、だんなは、かわいらしい喋り方をしますね。」
はっ、そっかもっと強そうな口調も考えなきゃ。とりあえず叫んで威嚇しお。
「グァァァァ!!」
周りの魔物たちはびくついた。やったね。さてと、
「ここは、人間最強の要塞城と小耳にはさんでな。どんなものかと見にきてみたのだ。」
「そ、そうでしたか。もはや我々魔王軍の力の前では、人間最強などゴミすぐのようなものですよ。ぐへへへ。」
「もう人間はいないのか?」
「いや、いますぜ、だんな。生きたまま魔王城に連れて行き働かせようと。ご覧くだせえ。来ましたぜ。ここの王と姫って話ですぜ。ぐへへ。」
「攻城を指揮したやつは、誰だ?」
「恐れ多くも、魔王様側近の四天王の一人、三十一の死霊軍団を統治するアガレス様ですぜ。それはそれは強くて、こんな城も一ヶ月で落としましたぜ。ぐへへへ。で、戦利品を物色してるんですぜ。だんなも飲まないっすか?」
「いや、今はいい。他にやる事があるんでね。」
ぼくは、グルルルと、喉を鳴らして威嚇をしながらその場を去って、勇者シオンに報告しに戻った。
「アル。お前、雄叫び出してたろ。ここまで聞こえて来たぜ。んでさ、早く人間の姿に戻ってよ。でかすぎて喋りにくいから。」
「そっかそっか。ちょっと待ってね。」
ぼくは、煙に巻かれて人間の姿に戻った。人間の姿だとシオンよりちょっとちっこい。
「それでね。お城は、魔物に全部取られちゃって。王様と姫様も魔王城に連れて行っちゃうって言ってたよ。」
「王様と姫様は無事なのか?」
「どうかな?さっき外に連れだされてたよ。」
「アル!助けに行くぞ!」
頭はまだ何もかぶってない勇者シオンと、大魔導士っぽい杖を持ったぼくと、城門へ急いだ。
「どけー!ザコザコザコー!おめーら、よえーんだよ!」
そう叫びながら、勇者シオンの行き先をさえぎるザコ魔物を、一撃で仕留めながらダッシュで向かっていった。
「アル。後ろは任せた!」
「おっけだよー。すぅー・・・・。」
ぼくは、大きく息を吸い込むと、炎のブレスを後方一面に吹きかけた。そして、背中に羽を生やして空高く舞い上がり。杖を天に掲げ、最大精霊魔法を唱えた。
「我らが謙遜の念を持って、この円に入らん。万能の神も、同じく、円に来たりたまえ。ことに我が作業に敵対する悪霊をこの場よりはらいたまえ。サトア・アレポ・テネット・オペラ・ロータス!」
魔法陣がぼくの下にぼわっと現れると、半径一キロ程度の大きさに広がり、強烈な一撃が地面から叩き上げられる。勇者シオンも王様も姫様も巻き込みながらの攻撃になるけど、一応、敵対する者だけに効く…はず?
「おい!アル!やりすぎ!ビビらせんなよー!」
「でも、ここら辺一帯、ほとんど魔物たちも吹っ飛んで消えたでしょ?えへへ。」
「周りが、バラバラになっちゃって、王様と姫様が生きてるのかわからねぇぞ!」
「多分、だいじょび。(保証はないけど)」
ぼくは上から、しばらく周りを飛んで、さっき見かけた王様と姫様を見つけた。
「勇者シオン!右にいるよ!」
「オッケオッケ。いってみるわ。」
ぼくも下に降りて、羽を隠して、勇者シオンが王様と姫様を助けてるところへ向かった。王様が勇者シオンに話しかけている。
「おお、そなたは、もしや勇者シオンではないか?最近はよく耳に入って来ておる。」
「はっ。王様ご無事で何よりです。それにしても、最強の戦士が集まる要塞城と、うかがっておりましたが、このようなことになっているとは知らず。すみません。もう少し早めに到着していれば。」
「いや。助けていただき感謝する。アガレスという魔物に一ヶ月も城を囲い込まれてな。兵糧攻めを受けた。情けないことに我が城は陥落してしまった。」
「そのアガレスは、今どちらに?」
「城の中に居座って、城の名前もアガレス城と名乗っておる。」
「取り戻してみせましょう。」
「そなたの祖父に似て凛々しい男よの。頼んだぞ、勇者シオン!」
姫様も、勇者シオンに一礼した。勇者シオンは、
「アル!行くぞ!」
と叫ぶと、一路アルガスのいる玉座の間まで一直線で駆け進んで行った。
「てめえが、アルガスか!」
「フハハハ。この城はいただい…。ぐわっ!」
勇者シオンは、会話もせずに切りつけた。ぼくもそれを見て、炎のブレスを吹きかける。勇者シオンは、氷魔法を勇者の剣にまとわりつかせアルガスの胴体を真っ二つに切り裂いた。
「ギェェェェー!!お前ら何もの…。」
上下が、別れたアルガスは、それ以上の言葉を発せず生き絶えた。
「ねぇ、勇者シオン。これ、中ボスなの?よわくない?ねぇ、よわいよね?」
「うーん。オレたち強すぎかもしれない。」
勇者(強)シオンと、ぼくの旅は折り返し地点かな。