一、平凡な一日

アレクスは自分のベットで目を覚ました。アレクスの部屋には、レコードプレーヤーとギターとアンプがある。他には、ベットと食べる机と椅子と冷蔵庫がある。もう窓からは日が射している。灰色のセメント壁が部屋をやけに狭く見せる。壁には、”Anarchy in Japan”(日本に無政府を!)と書いてあった。
 今日は、別に何もする予定もない。まず、レコードをかけた。「セックス・ピストルズ」の “EMI”が、スピーカーから爆発したように流れ出る。部屋のドアを開けて台所に向かった。冷蔵庫の中から卵を出し、フライパンを火であぶり、卵を焼く。半熟ぐらいで火を止めパンに乗せる。塩をぶっかけて食う。喉が乾くので、ミルミルを冷蔵庫から出して飲む。食事を自分の部屋でしようと、食いながら歩く。右手にエッグパン、左手にミルミルで歩く。部屋のいすに座り食べる。レコードからは、シド・ビシャスの ”My Way”が流れる。食いながら歌う、少し吐き出すが問題はない。1年前ここに来たときに買った安い机の上には、1年前に食べた焼き鳥の肉がくっついている。別に取ろうともしない。汚くもない。日本の政治家に比べると、よっぽどきれいである。
 食い終わると、赤いジーンズをはき、皮のジャケットを着込んだ。髪の毛をスプレーでばっと立たせた。レコードを消すと、外に出ていった。新宿の目(でかい目の書いてある壁)まで歩く。家からそれほど遠くでもない、歩いて15分くらいである。アレクスは回りを見渡している。別にだれもいない。また歩き始める。パンク・レコード店に向かう。中には別にパンクっぽい奴は少なく、普通の格好をしている奴が多かった。最近はレコードよりもCDが多い。アレクスはCDプレーヤーがほしくなった。アレクスは店員のところに行き訪ねた。
 「CDプレーヤーほしんだけど、どこが安い?」
 「秋葉原じゃないかなー。」
 「ありがと。」
 店を出て行った。新宿駅に着くと切符を買い、総武線に乗った。秋葉原に着くと、そこはやけににぎやかであった。すぐ目の前に店がある、オーディオが並んでいた。突っ立っているとおじさんが来た。
 「何か探してるの?」
 「え?ああ、CDプレーヤー。」
 「ウォークマンの?」
 「いや、でかいの。」
 「じゃあ、ここの店ににいきな。」
 おじさんは紙をアレクスに渡した。石丸電気と書いてある。地図も書いてある。アレクスは地図どおりに歩いた。でかい看板に石丸電気と書いてある。アレクスは中に入り店員を呼んだ。
 「おい、おじさん、4万円くらいでコンポがほしい。」
 「はい、こちらです。」
 店員は、アレクスを連れていった。中には沢山のコンポがある。4万9千円のミニコンポを見つけた。
 AIWAのだった。
 「おじさん、このコンポ4万円にしてくれ。」
 「せいぜい4万5千円だよ。」
 「でもよ、俺は4万円しかもってねえんだ。」
 「それでは、これはいかがですか?」
 店員は、4万5千円のSONYコンポを見せた。
 「ソニーは好きじゃねー。」
 店員は困った顔をして、KENWOOD の4万7千円のを見せた。
 「これならば、あいわのよりも重い音が出るよ。」
 「4万円でいいのか?」
 「しかたがない、4万円で。こちらは、お届けにいたしますか?」
 「いや、今持って帰る。」
 アレクスは、でかいダンボール箱を持って、新宿の自分の家を目指した。家につくと、外にはカオスがいた。カオスは、アレクスの一番仲のいい友達である。パンクの世界ではみんな、奇妙な名前を付ける。カオスは、アフリカ人と日本人のハーフである。鼻と耳に安全ピンを通している。軍隊ズボンに軍隊ブーツ、上には紫のボロボロスーツを着ている。
 「おい、アレクス、何だよその箱は?!」
 「わはは、ケンヴッドのコンポだー!!」
 「どこから、そんな金が出るんだよ。」
 「昨日の夜中、地下鉄で酔っぱらって寝ているおやじから財布うばっといた。中に4万円あってよ、それ全部つかっちまった。」
 2人は家の中に入っていった。
 「おいカオス、なに飲む?ミルミルとビールとウォッカがあるぜ。」
 「ミルミルとウォッカでわってくれ。」
 「わかった。」
 冷蔵庫からミルミルとウォッカを出して、グラスにいれた。アレクスは缶ビールにした。グラスをカオスに渡した。アレクスはダンボール箱をバリバリと開け、ベッドの反対側にコンポを置き、コンセットにつないだ。しかし、アレクス達はCDもカセットも持っていない。持っているのはレコードだけであった。
  をいれる。しかし、音は出ない。当たり前だ、聞くものがないのだ。カオスはいやそうな顔をして言った。
 「CDはどこだ。」
 「持ってない。」
 「意味ねーじゃねーか。」
 アレクスはボリュームを最大に上げた。ボーっといやな音がでる。アレクスは笑っていった。
 「意味ねーなこれ、CDでも買いに行こうぜ。」
 「金はあるのか?」
 「ない、おまえは?」
 「もちろんない。じゃあ、あそこいくか。」
 「ああ。」
 2人はお茶の水に行くことにした。お茶の水駅を出てすぐスクランブル交差点がある。その向こう側、右に犬小屋、左にユニオン(CDショップ)がある。2人はユニオンに入り、2階にあるパンクのCDをみる。たくさんある。5、6枚奪うことにした。「セックス・ピストルズ」「ダムド」「トータル・カオス」「カオス・U.K」「デッド・ケネディーズ」を選んだ。手に持ったまま出口に向かって走り出した。1階まで階段を駆けおり、外に飛び出す。盗難防止ブザーが鳴る。駅の方へ走っていくと、後ろの犬小屋からワンワンが走って来た。
 「そこの2人止まりなさい。」
 「犬のお巡りさん、困ってしまってワンワン、ワ、ワン。」
 アレクスはそう叫んで改札口を通過した。最初から、帰りの切符を買っておいたのだ。高尾行きの電車に飛び乗った。一番前の列車だった。まあまあ、すいていた。2人はCDのビニールをはがし、下に捨てた。CDを見ると「デッド・ケネディーズ」が2枚ある。カオスは電車の中を見渡すと、髪の毛を立てたパンクっぽい奴がヘッドホーンをつけて音楽を聴いていた。カオスは、そいつの肩をたたいた。
 「何だ?」
 「いや別に、何聴いてんの?」
 「トータル・カオス、なんで?」
 「デッド・ケネディーズのCDが1枚、あまってんだ。やるよ。」
 「まじ!サンキュー。名前は?」
 「俺?俺はカオス。あいつがアレクス。」
 「俺は、ナック。パンクの友達が少ないから、友達になろぜ。」
 「ああ、いいけど。これからアレクスんちで、戦利品を聴こうと思ってんだよ。いっしょに来いよ。」
 「いいの?」
 アレクスは、
 「俺んち、来ていいぜ。俺達も仲間が増えると楽しいじゃん。」
 と言った。3人は、いろいろ話をしながら、アレクスの家に着いた。
 アレクスは冷蔵庫にいきみんなに聞いた。
 「カオス、俺達はさっきの残りがあるから、それでいいよな。」
 「ああ。」
 「ナックは何にする?ミルミルとウォッカとビールがあるぜ。」
 「じゃあ、ビールにする。」
 アレクスは冷蔵庫からビールを出して渡す。冷蔵庫の音がない。カオスは、CDをつけようとするが、つかない。電気が止められている。カオスはおかしいという顔をして言った。
 「アレクス、電気がねーぞ。」
 「そういや、冷蔵庫も静かだったな。まじでミルミルがやべーぜ。今月電気代を払ってねーしな、暗くなる前になんとかしなきゃな。」
 ナックがビールを飲みながら話した。
 「俺が隣の家から電気を引いてやるよ。」
 ナックは自慢げにジーンズのジャケットの左胸ポケットからペンチを取り出した。そのまま、外に出ていった。電信柱に登り、アレクスの家の電線を隣の線とつないだ。家の中では、冷蔵庫の音がし始めた。アレクスはCDをつけた。外にいたナックにも音楽が聞こえた。
  Too drunk to Fuck (やるには飲りすぎた)
  Too drunk to Fuck (やるには飲りすぎた)
  Too drunk to Fuck (やるには飲りすぎた)
 と、「デッド・ケネディーズ」が流れている。中にナックが来ると、アレクスは玄関まで出てきた。
 「お前すげーな。なんでもできんだな。」
 「あんなのは当たり前さ。俺んちもそうして電気代は隣持ちってわけだ。ははは。」
 3人は部屋の中でポゴっていた。夜になったので、ナックは家に帰ると言った。2人は泊めようとしたが、明日もう一度来るということで、ナックを帰した。2人はそのまま、夜をポゴり通した。最後には疲れて眠った。

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うや

童話、小説、その他、いろいろ妄想したり書くのが好き。最近は、わたしのトリセツ「ショコラ」の文章を担当してるよ。https://chocolat.jp/ まだまだ書くこといっぱいあるんだ。

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