5 人間は転職できるんだよね、なんかいいな。

ぼくら魔物は、種族ごとの特性があるから職業っていうのはないんだけど、人間たちには職業があって、転職してみんなで役割を決めてるんだって。
で、ぼくのペット勇者シオンは自分の事を、勇者って言ってるけど、本当はそんな職業はないみたい。まだ子供だから学校で勉強してて、職業は学生兼戦士って言ってたかな。学生ってどんな仕事するんだろぅ。

勇者っていうのは、何かすごいことを成し遂げると勇者って呼ばれるようになるみたいだから、魔王とか倒さないとダメなんじゃないかな。

ま、機嫌よく一緒に冒険するためには、「勇者」って呼んであげた方が喜ぶし、うれしそうだし、いいよね。

うわさをすれば城門から、勇者シオンが出てきたよ。
「おーい。アルー!」
呼んでる呼んでる〜。
今日は自慢の鉄パイプと新装備の鍋ブタを装備してるみたい。
「おー!勇者シオン!一緒に特訓する?」
「もちろん!もう少しでレベル上がりそうなんだ!あの辺の砂漠まで行ってみようぜー。」
「勇者シオンって、なんのレベルがあがるの?」
「くー、痛い事いうねぇ。勇者のレベルが上がるって言いたいけど、上がるのは戦士のレベルなんだよね〜。」
「へー。戦士はつおいの?あと、学生のレベルは上がらないの?」
「学生のレベルは、、おいといて。。戦士はね、どんな職業の中でも最強だよ!片手剣に盾を装備して、どんな強い敵でも倒しちゃうんだ!今のところ英雄イーヴァルが、きっと最強だろうな〜。もちろん、オレのじいちゃんも強かったけど。じいちゃんはガチ戦士じゃなくて、魔法戦士だから剣技だけならイーヴァルが勝つんじゃないかなぁ。」
「魔法戦士?魔法使い兼戦士みたいな感じ?」
「そうだなー。剣技に魔力つけて戦ったり、何かこう、ピッカー!チュードドーン!みないなのできたって。」
「なにそれ!かっちょいい!ぼくもそれやりたい!」
「アルにはムリでしょー。もっと邪悪そうな呪文とかならできるんじゃない?」
「そっかぁ。人間に近い姿になりたいなぁ。そしたらできるかも?だよね?」
「だねぇ〜。今はニワトリだもんね。」
「ちがうよ!あの食用ごときの鳥と一緒にしないでー!クェー!」
「最近、クエって言わなくなってたけど、怒るというんだな。ははは。やっぱ、ニワトリじゃん。クェーって。ははは。」
「石化ブレ・・。」
「ちょっ!まった!ごめんごめん。ジョークだって。コックはちゃんとした魔物だよ。うんうん。」

たわいもない会話をしながらザコ魔物を倒しながら砂漠の方へ向かって歩いたよ。

30分くらい歩いたところに砂漠のスタート地点があって、そこから地平線まで広がる砂漠があるんだ。そして、どんなにスゴ腕の冒険者も最下層までたどり着いたことがないという古代の遺跡もあるんだ。

ピラミッドに似たような、でも違うような、そんな不思議な遺跡までやってきた。
「勇者シオンー。いってみる?」
「とりあえず1層はクリアしたいな。」
「レッツゴー!」
遺跡の扉が開くと一階層へ続く階段が、ゴゴゴと音を立てて、下から盛り上がってきた。
「アル!下見てよ!階段がはえてきたぞ!」
「すごー!こんなの魔物じゃ作れないよ?」
「人間も作れないと思うけど、古代文明ってすごかったのかな?失われたって言ってた気もするから。」
トントンと階段をぼくらは降りていく。一階層に着いたら、まわりが少し暗かった。次の瞬間床の左右から、青い光がすぅーっと出てきて、びっくりして、クェ!って叫んじゃった。
「びっくりしたー。これも古代文明なの?」
ぼくは、勇者シオンを見上げると、真っ青になって震えてた。
「勇者シオン?大丈夫、震えてるけど。」
「馬鹿言うなよ。。武者震いだ!よし進もうぜ!」
迷路みたいになっているのかと思ったら、青い光に誘導されるがまま、すんなりと進んでいけた。でも、次の瞬間、石の巨人ゴーレムが現れたよ!
「ぎゃー!」
「クェー!」
と二人は叫ぶと後ろを振り返りダッシュで逃げ出げだし・・・、回り込まれてしまった!
「オマエラ、ナンデ、ニゲル?ワルイ、ニンゲン、カ?」
ん。戦う意思はないのかな?じゃあ聞いてみよう。
「ぼくは、アル。魔物だけど、悪い魔物じゃないよ。」
ゴーレムの目が赤く光った。
「マモノ、タオス。マモノ、タオス。」
え〜!魔物嫌いなの〜!
「ちょっと待ったー!オレは、人間!しかも勇者だぞ!こいつは仲間だ。なんで、怒る?」
「マモノ、テキ。ココ、ニ、タクサン、スミツイタ。ハイジョ、スル。ユウシャ。タイジ、シテ、クレ。」
ゴーレムの目は緩やかに赤い光を消した。
「あー、退治したいのもやまやまなんだけど、まだまだ弱くてさ。。」
今度は、緑に光る。
「スキャン、カイシ。センシ、レベル、ジュウ。アト、ロッピャクサンジュウ、デ、ジュウイチ。ヨワイ、ヨワイ。モウヒトツ、ガクセイ、レベル、サ」
「おーっと、そっちのレベルは言わなくていいぞー。。。」
「ツヨク、ナッタラ、タイジ、シテ。」
ぼくと勇者シオンは出口まで急ぎ足で向かった。
「ねぇ。勇者シオン。勇者には相手のレベル見えるってほんと?ゴーレム、いくつだった?」
「五十五だったよ。むりむり、帰ろ。あいつでも手こずる魔物ってなんなんだよー。魔王より強いんじゃね?」
二人は一目散に城下町にもどった。

「あ。ハローワークだ。転職できる!」
勇者シオンはそう言って建物の中に入って行った。
「よし!ちょっとだけ、魔法使いやるよ!とりあえずこの魔術書。。うぇー難しいなぁ。。。」

一層もクリアできなかったや。
ぼくらの旅はまだまだつづくね。