七、給料

 11月の終わり、アレクスとカオスはにやにやしながら1日を働いていた。2人は、ケツのポケットに分厚い封筒を入れていた。客に接する態度もだいぶ違う。客ににやつきながら近づいて、これはいい音楽だよ、どうだと勧める。やけにべたべたとつきまとい、それを強引に買わせる。そして、サンキュー、また来いよ、と言う。たぶん、その客は来ないだろうが、アレクスとカオスは、また来てくれると思っているのだろう。今日は1日中こんなペースで働いた。バイトが終わるとき、カオスがCDを買った。「ザ・クラッシュ」「シド・ヴィシャス」「パンク・オ・ラマ(VA)」を買った。店長は安くしてくれた。アレクスは買いたいCDを買わずに我慢した。ナンシーに買うなと言われたのだ。今までのアレクスならば、俺の生き方に文句を言うなと言って、自分の好きなようにCDを買っていただろう。しかし、もう昔のアレクスじゃなかった。本気でナンシーに惚れていたのだった。アレクスの家にカオスも行くことにした。アレクスはカオスにこう言った。
 「カオス、お前は俺の親友だ。一生、親友だ。」
 「気持ち悪いぞ、お前。」
 アレクスは、にこにこした。カオスがCDを買ってアレクスの家に来てくれるからである。
 家に着くと、ナンシーは飯を作って待っていた。米のにおいだ。ナンシーはアレクスに飛びつき、キスをした。アレクスは封筒をナンシーに渡した。
 「俺達の生活費だ。お前が管理しろ。」
 ナンシーは喜んで、中を見た。96000円も入っている。
 「よくがんばったわね。さあ、早く中に入って!カオスの分も食事があるから。」
 カオスは喜んで中に入っていった。アレクス達は、カオスのCDを聞くことにした。「パンク・オ・ラマ」である。CDを聞きながら、飯を食う。アレクスはカオスに言った。
 「明日、お前んちで、バンドの練習するんだよな?」
 「ああ、俺はばっちりだぜ。ナックとソフィはどうかな。」
 「大丈夫だろ。」
 アレクスとカオスは、明日のことについて話している。食い終わると、CDを止めた。アレクスはギターを取って弾きだした。カオスは箸を両手に持って、がちゃがちゃとグラスなどをたたき、ドラムのまねをした。アレクスはナンシーに、
 「のどが渇いたからミルミルをくれ。」
 と言った。カオスはしばらくすると、帰っていった。その後ナンシーは、アレクスにこずかいとして、1万円をあげた。
 「これで好きなCDでも買いなさい。」
 「いいのか?サンキュー、ナンシー。お前が好きだ。」
 ナンシーに抱きつく。そして、アレクスは金をポケットに詰め込んだ。また、ギターを弾き始める。夜が更けるまで、弾った。
 カオスも家に帰るとすぐに、ドラムを狂ったようにたたきだした。
 そのころ、ナックとソフィもやはり練習をしていた。ナックがベースを弾き、ソフィがギターを弾きながら歌う。ナックはナンシーにこう言った。
 「じゃあ、GからC行ってBからCに戻る。いい?」
 「テンポは?」
 「このくらいのテンポ。」
 そう言うと、ナックはベースのラインを弾き出した。ドゥンドゥンドゥンドゥンと低い音がアンプから響く。それに合わせてソフィはまず、和音で弾く。
 「こんな感じでいいのね。」
 「ああ。」
 2人は夜遅くまで練習した。
 一方、ジャックとシドニーは”Anarchy” でサイダーをがぶ飲みしていた。そして、アンソニーは新宿の目の所で熟睡中だった。
 次の日の昼過ぎ、カオスの家にアレクス、ナンシー、ナック、ソフィは来た。「セックス・ピストルズ」をコピーする。まずは、”Anarchy in the U.K.(アナーキー・イン・ザ・U.K.)” をやる。
 ジャジャジャジャジャジャジャジャジャーン ギター、ベース、ドラムが一斉に鳴り響く、ごうかいである。ソフィとアレクスがボーカルをやる。ナンシーはみんながやっているのを見ている。みんなの、マネージャーだ。見るだけじゃつまらないので、アレクスの隣に行き、ポゴりながら歌った。みんな、楽しそうにやっている。次に”Got save the Queen(ゴット・セイブ・ザ・クイーン)” をやった。うまくいく。みんなはマジに練習していたようだ。その後、2、3曲やると、少し疲れてきたので、休憩することにした。アレクスは、みんなに言った。
 「俺達、マジでうまいな。」
 みんなはにたにたした。ナックが言った。
 「12月23日が楽しみだ。」
 カオスが言う。
 「ああ、パーティだろ。ばりばり、やりまくろうぜ。」
 5人は笑って。23日を楽しみにしていた。ナンシーが言った。
 「そうそう、昨日、アレクスとカオスがなんと無事に給料をもらうことができました。そこで、お祝いの飲み物とお菓子で乾杯しましょう。」
 ナンシーは袋から飲み物とお菓子を出した。みんなは、すごいと言って、ふくろをあさり始めた。各々好きな飲み物と食い物を取って、乾杯した。
 しばらく休むと、また練習を始めた。”My Way (マイ・ウェイ)” をやることにした。いつもならば、スティーブが歌っているが、檻の中だしかたがない。アレクスが歌うことにした。シド・ヴィシャスのまねをしながら歌う。
 5人は夜が来たのも知らず、コピーをし続けた。その日は、カオスの家にみんなは泊まった。

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うや

童話、小説、その他、いろいろ妄想したり書くのが好き。最近は、わたしのトリセツ「ショコラ」の文章を担当してるよ。https://chocolat.jp/ まだまだ書くこといっぱいあるんだ。

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