十二、初日の出

 夜、ジャックはまたあの赤いバスでアレクスの家にきた。アレクスはバスに乗り込み、ジャックと手と手をたたいた。アレクスは一番前のベンチに座った。もうみんなバスに乗っている。おはようと挨拶をする。そして、カオスとアッシュのいる病院に向かった。アレクスはみんなに言った。
 「今日はアッシュの調子がいいらしい。」
 みんな喜んで、アッシュも連れていくことにした。警察病院の前にバスを止めた。ジャックはバスに残り、他のみんなはアッシュを迎えに行った。アッシュはまだベッドに横になっているが、元気そうに、カオスと話をしている。アレクスは担架を見つけて、持ってきた。そして、アッシュを担架に乗せその上に布団をかぶせてバスに連れていこうとした。それを見た医者は、止めようとした。しかし、アッシュが医者に言った。
 「今日は調子がいいの、みんなと行かせて。」
 医者はダメだと言ったが、アッシュはそれを強く断った。アッシュをバスの中に入れると、一番後ろのソファのいすに横たわらせた。カオスがその横に座っている。
 「出発だー!」
 ジャックはそう叫ぶとエンジンをかけた。ナックはまたテープを持ってきた。「ザ・クラッシュ」が流れる。その後には、「ランシド」も流れた。みんな、バスの中でポゴったり歌ったりしている。すでにスティーブ追悼会は始まっていた。ビールで乾杯をし、みんな吹きかけ合っている。アレクスはカオスの所に行き、
 「おい、カオス、アッシュは大丈夫か?」
 と、聞いた。すると、アッシュは笑って、
 「大丈夫。」
 と、答えた。アレクスも笑った。
 だいたい1時間位すると、東京湾に着いた。バスは湾岸につけて止まった。みんなはスティーブのパーティだ、と言ってはしゃいでいる。シドニーは言った。
 「スティーブもきっと喜んでいるぜ。」
 みんなは、外に出た。音楽を外に聞こえるようにした。海は年々きれいになっているようだがやはり臭い。「カオス・U.K」が流れる。外でみんなポゴっている。飲み物、食い物をたくさん持ってきた。各々好きなのを取って飲む。アッシュも外に出てきて、軽くポゴった。みんな、喜んだ。アッシュが元気になったからである。
 1時間くらいポゴると、さすがに疲れる。一度、バスの中に入って、日の出を待つことにした。あと2時間くらいで、日が出るだろう。バスの中は暖かいので、寝る奴がいる。シドニーとナックは寝ている。アレクスは2人の頭にビールをかけた。2人は飛び起きて、
 「何すんだ!」
 と叫んだ。アレクスは言った。
 「スティーブが化けて出るぜ。」
 そう言うとみんな笑った。音楽を聴きながら、日が出るのを待った。バスの中で日が出たら「乾杯」しようと決まった。東の空が明るくなってくる。ここからが非常に長かった。一時間は待たなければならなかった。みんな、日の出を、バスの中から見た。 カオスは乾杯の音頭をとった。
 「スティーブ、じゃあな、また会おうぜ!そんなら、乾杯!!」
 パンクスは乾杯をした。太陽は一度出始めると勢いよく出てくる。それを見たジャックは太陽に、
 「てめー、初めからその速さで出てきやがれ!俺を待たせるなんて、おめーが初めてだ。本当ならば蹴り落としてやりてーぐらいだぜ。」
 と、言ったので、みんなは笑った。バスはゆっくりと家に帰ることにした。東京湾を背にソフィは投げキスをした。みんな大変眠そうである。バスの中に「スージー・アンド・ザ・バンシーズ」の”Into the Lig-ht (イントゥ・ザ・ライト) “が流れる。

Into the line(光線の中に入れば)
I see it fine(すてきな気分)
into the line(光線の中に入れば)
our hearts entwine(二人のハートは絡み合う)
Remenber when(もう一度思い出してよ)
your time again(あの頃のあなたを)
Standing in the light(光線に立ち)
alway sitting on the line(いつも境目にいたわ)
never on side(どちら側にもつかず)
always wanting to be right(常に正しくありたかった)

 女性がボーカルのバンドである。ゆるやかなテンポがみんなを眠たくさせてしまう。みんなうとうとしていた。アッシュはカオスに言った。
 「とっても楽しかった。ちょっと、眠い。寝るわ。」
 そう言って。カオスにキスをして眠った。カオスも眠たかった。しかし、カオスは目が覚めた。
 「まさか!!アッシュ!」
 アッシュをゆすってみたが目を閉ざしたまま。大きな声で叫んだ。
 「アッシュ!」
 みんなは驚き、うとうとしていた目を開き、一番後ろに集まった。アッシュはすでに、呼吸をしていなかった。心臓も止まっている。死んだのだ。カオスは言った。
 「アッシュ、馬鹿野郎!勝手に死ぬな!」
 みんなは何もいえなかった。車内には、彼女のためのレクイエムが流れ続ける。

into the light(光の中に入れば)
I see it fight(戦いが見える)
into the light(光の中に入れば)
a new horizon(新たな地平線が)
Bleached into white(漂白され)
kept out of sight(視野から締め出され)
Standing in the light(そこにある光の中に立ち)
always sitting on the line(いつも境目にいたわ)
never on side(どちらの側にもつかず)
Pushing out the light(光を跳ね返した)
Dead aheand in the night(夜に身をまかせ)
burning in the light(光の中で燃えたわ)
and knowing that it’s right(それが正しいと信じ)
Dead ahead in the light(光に身をまかせ)
into the light  into the light…(光の中へ 光の中へ…)

 曲が終わると、テープはちょうどA面からB面に変わるところであった。その間、バスの音だけがする。そして、B面の初めの曲が流れ始めた。「ランシド」の曲だった。みんな、何1つ話さず病院に向かった。
 病院に着くと、アッシュを担架に乗せ、布団をかぶせて病室に運び込んだ。医者はすぐに来て診察をした。もちろん、死んでいる。医者は言った。
 「無茶なことを・・・。」
 医者は白衣のポケットから紙を出した。
 「カオスという人に渡してもらいたい。」
 「俺だけど・・。」
 「手紙だ。彼女からだ・・。」
 カオスは手紙を受け取って、読んだ。漢字があって読めない。ナンシーに読んでもらった。

カオスへ
私はそろそろ死ぬような気がします。
そこで、私は最後の手紙を書きました。
一番やさしかったカオス、いろいろありがとう。
私が普通の体だったら、ずっといっしょにいれたと思うけど、やはりAIDSには勝てませんでした。
死んで、やっと楽になれます。
今度生まれ変われたら一緒に暮らそうね。
アッシュリン

 ナンシーが読み終わると、カオスは医者に言った。
 「俺にもっと金があれば、アッシュは助かったんだろ?」
 「いや、どんなに金を積まれても、彼女は助からなかったよ。」
 アッシュはその日のうちに葬られた。スティーブと同じ墓地だ。そして、スティーブの2つ隣に葬られた。同じ四角い石である。カオスは言った。
 「俺達もいずれここで寝るんだよな。」
 アレクスは答える。
 「いやわからないね。スティーブとアッシュの間に誰か入ってる。1週間の間に1人〜2人は死んでここに来るんだぜ。俺達の入る場所なんかなくなって、いつかは生ゴミだよ。」
 ジャックは言った。
 「俺達はとっくに生ゴミだぜ。」
 みんな、笑った。カオスはアレクスから赤の油性マジックをかりてでアッシュの石に書いた。

”愛しのアッシュリンここに眠る 1995.1.1”

 パンクス8人にとって最悪の年明けとなった。カオスはアッシュの墓に、ミルミルウオッカをかけた。
 「お前、本当に死ぬまで飲まなかったな。今、飲ましてやるよ。」
 みんな、その墓場で別れた。各々の家に戻りみんな寝た。カオスも家に帰って寝た。カオスは3日の間、家の外には出てこなかった。

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うや

童話、小説、その他、いろいろ妄想したり書くのが好き。最近は、わたしのトリセツ「ショコラ」の文章を担当してるよ。https://chocolat.jp/ まだまだ書くこといっぱいあるんだ。

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